だま氏主催によるJMO模試に参加させてもらいました(問題は以下のツイートを参照)。
結果は8-8-8-0-0で24点でした。実際のJMOよりかは難しい気がするので余裕持って3完できたのは良かったですが、総じて時間を使いすぎたりと演習不足を感じるポイントも多かったです。僭越ながら各問題についてコメントします。
JMO本選模試です pic.twitter.com/Cbur9voav2
— だま (@dama_math) 2019年12月29日
問1
恐らくどういう方向性からでも解けますが、逆に出来ることが色々あるのでハマりやすいとも言えそうです。想定解は簡潔でしたが発想一発という感じだったので少し厳しいかもしれません。ここでは僕がコンテスト中に書いた、決して綺麗ではないものの素朴な推論だけで着想できる証明を紹介します。
少し実験すれば流石に気付くと思いますが、操作は可換であることに留意してください。また同じ行および列に対して操作を2回施すと元に戻るので、各行および各列に対して施される操作は高々1回ずつとして良いです。したがって行 および列 に対して操作を行うとして良いです。簡単のために以下のように集合を定義します。
すると操作によって色が変化するのは および に属するマス目と表現できます。 および に属するマス目のうち初期状態が黒色のものを 個、白色のものを 個とおくと、以下示すべきことは です。 とおき であるとします。
は一定なので の値を上から評価したいです。ここで
であることが容易にわかります。AM-GMより で、また より に留意すると、
これを変形すると がわかります。 の場合も を用いることで同様に評価できます。
かなり雑な評価でしたが大丈夫でしたね。ある方針で解けそうだと思ったら、ある程度はとりあえず試してみた方が良いと思います。エレガントでもそうでなくても、証明として正当でさえあれば同じ点数がもらえるわけですから。
問2
JMO2番級としては難しいと思います。与式が1変数なので具体的な代入でどうこう出来るというものでもなく、加えて非自明な解が存在するからです。
僕の答案は想定解と全く同じでした。基本的な方針は他に無さそうな気がします。整数型のFEはかなり議論に柔軟性が求められ、今回も決して典型というほどのものではありませんが、基本的な考えは同じです。数をあたって感覚を掴みましょう。
また単調関数の扱いには慣れておくと良いと思います。特に単調関数が十分先で一定になるという議論はありがちな気がします。
問3
これも決して簡単ではないと思います。対称点の扱いって難しいですよね。しかし角度や長さで得られる情報は多く、特に三角形の合同や相似と相性が良いイメージがあります。今回は想定解と違う方針で解いたので、簡単に紹介します。
大前提として三角形の外心と垂心が等角共役の関係にあることは押さえておきましょう。図を丁寧に描くと、三角形 の外心と 三角形 の外心 は について対称であるように見え、実際その通りです。したがって と について対称な点 について、三角形 の外心が であること、特に対称性より を示せば十分です。
超頻出の構図として で、 と合わせて です。また仮定より でangle-chaseを呼吸のように(原文ママ)こなすとこれらが挟む角が等しいことがわかります。すなわち三角形 と の合同が従い、 が示されました。
後で複素計算も試したのですが、上手いこと共通因子が消えたりして条件の割にはかなり簡潔な式に収まりました。1問に対して複素計算を完遂するのはどうしても一定の時間を要するので駆け引きが難しいのですが(特にJMO本選のように時間に厳しめの試験だと)、選択肢の一つとして常に念頭に置くべきだとは思います。初等での考察である程度ほぐしてから複素で殴る、など柔軟に手法は使い分けましょう。
問4
この手の問題はどうせ存在しないものだろうと完全に思い込んだので解けませんでした。人間の直感というものはかなり優秀に出来ていますが100%正確なものでもないので、先入観には捉われすぎないようにしましょう(適当)。よくよく考えたら下降的数というのは(密度の問題として)そこまで多くないので、存在するといわれても別に非直感的じゃないのかもしれません。
問5
流石に考える時間が無かったです。4時間という決して長くはない試験時間の中で、5問すべてに有効な議論を与えることはほとんど不可能に等しいです。自分の得意・不得意を確実に把握したうえで、適切な時間配分や取捨選択を見積もるようにしましょう。